敗者のゲーム[原書第八版] チャールズ・エリス 2022

敗者のゲーム[原著第8版] | チャールズ・エリス, 鹿毛 雄二, 鹿毛 房子 |本 | 通販 | Amazon

 

NISAが拡大するに当たって、いたるところで推薦されていた一冊。

初版は1985ということで、それ以来読まれ続けている名著とのこと。

本書のメッセージは非常にシンプルで訳者あとがきから引用すると

投資に成功するということは、値上がり株を見つけることでも、ベンチマーク以上の成績をあげることでもない。自ら取りうるリスクの限界の範囲内で、投資目的達成のため、市場の現実に即した長期的な投資計画、特に資産配分方針を策定し、市場の変動に左右されず、強い自己規律の下で、その方針を守ってゆく(P289)

ということになる。

私のような投資もNISA程度しかやっていない入口にいる人間からみて、簡単にまとめると以下のようになる。

(インフレのせいで資産は目減りするため現金で資産を保有していてはならない。インフレ調整後でも資産を守れる、ないしは増やせるような投資をする必要がある。)リスクの観点から債権ではなく、株式投資(他、不動産投資なども該当するが)が、唯一のインフレに勝てる投資である。

ただし投資信託とか個別株投資で、市場よりも大きく利益を出すことは個人投資家にはほぼ不可能と言える。株式投資市場にはプロが飽和しており、とても個人投資家が入る余地もない。また市場の飽和に伴って、長期的に市場に勝ち続けるプロもいないため、個別のファンドだとか投資信託は良い選択肢ともいえない。

その点市場の成長と連動するインデックス投資は、短期では乱高下するものの長期では平均への回帰性を示し、必ず平均的に推移する(市場はインフレであれば成長するし、これまで平均的に成長してきているし、これが成長しないならば株式投資をすること自体に意味がない。デフレだったらそもそも投資しなくても良い)。

投資は、この平均に投資をすべきで、平均に投資をすると考えるときには、個別株や投資信託などではなく、インデックス投資が唯一かつもっとも平均に近い投資になる。なおかつ手数料も安く、そうそう買い替えるものでもないから税金の心配もすくない。なおインデックス投資と言っても、自国だけではなく、世界の様々なインデックスに分散させないと平均的成長の恩恵は受けがたいので注意が必要である。

 

いずれにしても重要なことは、

  1. まず貯蓄をして投資の源泉を確保すること。
  2. 老後資金を確保するために、インフレに打ち勝ち資産を確保するためにどのような貯蓄と投資が必要かの計画を立てること
  3. 自分が何歳であっても(70歳や80歳であっても)、常に長期を見据えた計画を立てること。投資は平均の恩恵を受けないと決して勝てない。なればこそ、自分の配偶者や子供孫に続く投資として考えないといけない
  4. インデックス(インフレに勝てる見込みがあれば債権投資やREITのような投資もあり得るが)や確定居室年金を中心とした投資ポートフォリオを組み、天引きなどを使って定期的に積み立てること
  5. 年に1回程度考えたり見直すこと(これが多すぎると平均の恩恵が受けられなくなるので要注意。また年に1回、配偶者やお金について考えられるようになった子供に金融教育として一緒に考えることも有用だ)

ということになる。

この他P177の投資家への「十戒」からの提言としては以下のようなことを理解しておくといいだろう。

  • 税務上有利という点で動いてはならない。そういった商品は投資的な魅力はなく手数料をとられるだけだ。(なお何らかの事情で株式を手放す場合などは、寄付などを組み合わせて別途対応する必要はある)
  • 自宅を投資資産と考えてはならない。家はあくまで家族の幸せのためにある。
  • 証券営業などの営業には注意すること。
  • いわゆる新金融商品に手を出してはならない。投資家が保有するためにではなく、投資家に売るために設計されている。
  • リスクが少ないという理由での投資はしていけない。それでは結局インフレに勝てない
  • 運用に売買は不要。売買はしなければしないほどいい

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NISAの普及によって、インデックス投資がアクティブ投資よりも長期的に利益を出せるということは一般常識になってきているような気がする。(少なくとも私はそうだった)

とすると本書がひたすら(約300pのうち200p程度)述べている、アクティブ投資では市場平均≒インデックスには勝てない、というメッセージは非常に冗長に感じた。

しかしながら、金融でギャンブルすることで、一発逆転を狙いたいという人間心理は今も昔も尽きることがない衝動だろう。そういった欲望につけこんだ営業や広告で我々の生活も満ちている。ちょっと石を投げれば保険や金屋の知り合いに当たるし、ちょっと仕事の話をすれば投資商品をそれっぽい言葉で勧めてくるものだ。

「私も購入してやってるよ!」

 

そう考えると、非常に冗長でも、素人がアクティブ投資や短期投資で勝てるわけないと言ってくれるのはありがたく、その書籍が長い間多くの人から読まれているというプレミアを感じられる本書を読む価値はあるのかもしれない。

ただ、、、あまりにも、、、素人であり、あまり金融ギャンブルに興味のない自分には冗長に感じましたけども。。。

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最近のWSJの記事で、こうやってインデックス投資をする人が増えてくると、市場の健全性が失われてくるという言説を読んだ(ソースを出せずに申し訳ないが。。。)

つまり本書で指摘されるプロの投資家同士で争い合う環境があるから、企業の適切評価が進むし、適切評価と株式価格の差異が是正されていく。それがある種健全な株式市場を産んでいるわけだ。しかしインデックス投資が増え、アクティブ投資が減るようになれば、そういった市場の健全性は失われていく。

インデックス投資自体が良いのは良いとして、拡大すること自体は、それはそれで問題なのだろうという批判的な目線を持って本書を読む必要はあると思う。

 

本書では、プロが最高の技術やテクノロジーを持ってライバルに打ち勝とうとしのぎを削っているゲームは、相手のミスをみつけてつけ込むしか、勝利することができない、アクティブ投資はそのようなゲームであると言っている。

だからそのゲームに一個人として参入しても負けるに決まっているのだからやめろといっているわけで(そして長期的な平均への投資が唯一勝てるゲームだというわけだが)、これはそもそも他のプレイヤーアクティブ投資をするというミスにつけ込んだ方法論であるともいえる。

人間がギャンブル好きである以上、”アクティブ投資をするというミス”を犯す人はそう減るわけでもないだろうが、このミスをする人が減った時にはインデックス投資のあり方もまた再検討されるのは必然であるだろう。

なればこそ、本書が告げるように、適切な資産配分を年に1度程度の頻度でつねに考える、そういったことが本質的なことなのだろうと思われる。

だから本書をしてインデックス投資の推奨書として読むのではなく、長期的な目線で平均に投資できるようしっかり資産配分を考えなさいという、本だと理解するとよいのだろう。

インフレに勝って老後資金をしっかり貯められるよう、しっかり今のうちから準備していくべきだろう。

なぜなら著者の言う長期投資とは半世紀とかそういう単位のことなのだから。